arpara(VR HMD)用の換気機能つきフェイスパッドを作る

VR

はじめに

以前 arpara という VR HMD をクラウドファンディングで購入しました。軽量で高解像度なのが長所のHMDなのですが、短所もいろいろありました。自分が一番問題だと思ったのは、軽量なのに つけ心地がかなり悪い点です。

まず、フェイスパッドの支持面積が狭すぎて不快だし、目とレンズがかなり近いため 熱が伝わってくるし、レンズも曇りがちです。

アンケートに答えたら、改良版のフェイスパッドを送ってくれるとのことだったのですが、数ヶ月たってもまだ送られてきません…。

そこで今回は、換気機能つきのフェイスパッドを作ってみました。

作成方針

まず、顔面とフェイスパッドを超ぴったり合わせることを目指します。そうすれば、顔面への負荷が均等に分散しますし、位置がずれてピントが合わなくなることも 起こりにくいでしょう。

そこで今回は 3Dスキャナーで顔の凹凸をスキャンしました。Revopoint POP2 という3Dスキャナーを使いました。これもクラウドファンディングでゲットしたものです。

Revopoint POP2 3Dスキャナー
Revopoint POP2 3Dスキャナー

換気用ファンの電源は トラッカー用のUSB端子から取り出します。トラッカーをつなぐこともできるように、別のUSB端子を取り付けます。

ファン速度は強弱の切り替えができるようにします。

素材の準備

顔面を3Dスキャンしました。3Dスキャナーを固定して、顔を左右に回すかんじでやってみましたが、特に問題なくスキャンできました。目の周りのデータさえあればよいので楽でした。

3Dスキャンデータ(禁則事項)
3Dスキャンデータ(禁則事項)

換気用には小さいブロワーファンが必要で、30×30×10mmの大きさのものを採用しました。ただ、5V駆動のものは特に入手性が悪く、中国から個人輸入しました。価格も送料も安かったのですが、届くまで時間がかかりました。

ブロワーファン
ブロワーファン

micro USBプラグ も小さいものが必要だったので、Amazonで一番小さそうなケーブル を購入して、切って使いました。 (写真は micro USBのコードの方向が逆のもの)

USBケーブル
USBケーブル(使ったものとはコード方向が逆)

設計

3Dプリント用のデータは Fusion360 で設計しました。

顔面のスキャンデータをインポートして、そのまま使うのではなく ガイドとして利用し、顔の形の自由曲面を作成しました。ある程度以上細かい凹凸は必要無いと思ったことと、調整を行えるようにしたかったからです。

顔面の自由曲面(フェイスパッドがあたらない部分は適当)
顔面の自由曲面(フェイスパッドがあたらない部分は適当)

さらにフェイスパッド部分と ファンやスイッチを収める 空調部分を作りました。「フェイスパッド周り」と「空調部分」を合成して、「顔面部分」と「空気の通り道」を切り取ると最終的な形状になります。

フェイスパッド周りの設計
フェイスパッド周りの設計
空調パーツの設計
空調パーツの設計

空気の流れは、両目の下から上へ流れるルートと、arparaの排気口から空気を吸い出すルートがあります。

全体の設計・空気の流れ
全体の設計・空気の流れ

設計したものは 3Dプリンターで出力します。

回路と実装

電子回路は簡単です。トラッカー用の micro USB端子から電源を引き出す。トラッカーが接続できなくならないように micro USBコネクタを追加する。電源からファンの間にスライドスイッチを設けて、オフ・弱風・強風 の切り替えができるようにする。といったかんじです。

弱風にするために 途中に抵抗器を入れるのですが、この値は実際にいろいろ試して 15Ω程度が良さそうでした。電流は抵抗器無しの強風だと 200mA 程度、15Ω程度の弱風で 120mA 程度でした。弱風の時には抵抗器で 0.216W 程度の電力が消費されますので、1/4W以上の抵抗器を使う必要があります。私は手持ちの部品の都合と 熱容量に余裕をもたせるため、33Ω 1/4W の抵抗器を並列につないで、16.5Ω 1/2W 相当にして使いました。

実際の電子回路
実際の電子回路

組み込むと以下のようになりました。ここにフタをします。

電子回路を組み込んだところ
電子回路を組み込んだところ

顔に接する面ですが、ぴったりのサイズならばクッションいらないのでは…、と思ったのですが、重力で下方向に力がかかると、鼻の付け根に力が集中したりするので、厚さ1mmの薄いクッションを貼り付けました。ちなみに下の写真のグレーのパーツはIPDを固定する追加パーツです。

クッションを貼り付け
クッションを貼り付け

完成・テスト

以下のように出来上がりました。

完成写真1
完成写真1
完成写真2
完成写真2
完成写真3
完成写真3
トラッカー付
トラッカー付

実際使用してみますと、強風だと爆音でした。弱風だと音は聞こえるものの気にならない程度で、目の周りがスースーして 換気も十分できているようでした。まだ動画鑑賞しかしておらず、汗ばむ体を動かすゲームなどはやっていないので 今後さらに検証します。

重量は83gでした。arpara本体が225gほど、付属のフェイスパッドが27gほどであることを考えると少し重いですね。3Dプリンターのスライサーの設定を変更すれば、60g程度まで軽量化できそうです。それ以上は設計変更が必要そう。

それから arparaは 画面の端の方の色がおかしくなる現象があるのですが、目の位置をレンズの中心に合わせると この現象はかなり抑えることができます。今回、位置をしっかり固定できるようになったため、色ずれもほとんど気にならない程度になりました。

おわりに

今回、換気機能つきフェイスパッドを作ってみたわけですが、かなり満足しています。

arpara 標準のフェイスパッドが不快だったため、これまで動作確認程度にしか遊べていなかったけど、これから本格的に使用していきたいと考えています。

しかし、arparaのストラップについても不満があります。標準ストラップは固定能力が低いし、ヘイローストラップは安定感はまあまあだけど 寝っ転がれない。時間があれば改良していきたいです。

更新履歴

2022.08.22 公開

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