ざっくりいうと
3Dプリンターのヒートベッドが加熱し続けて、異常な高温になるようになってしまった。
調べてみると、ヒーターをオンオフする ソリッドステート リレー が壊れていた。
交換するには、時間か金がかかってしまうので、代用する回路を自作して修理した。
3Dプリンターの故障と修理と稼働と故障
3Dプリンター のホットエンドが破損してしまい、部品の取り寄せでなどで、しばらく稼働させていませんでした。やっと ホットエンドを交換して (詳しくは「CR-10S Pro のホットエンドを交換する」)、テストプリントを開始したところ、間もなくエラーでプリントが停止してしまいました。確認すると、ヒートベッドが約140℃になっている!ヤバイ!
裏蓋を開けて確認してみると…、なんか部品が外れてる!?
CDG1-1DD/40A という型番を検索してみると、ソリッドステート リレー(SSR) でした。ソリッドステート リレー っていうのは、制御入力端子に電流を流すと、出力端子をオンオフできるという リレー の一種です。小さい電流や電圧で、大きな電流・電圧のオンオフをしたり、電子回路でAC100V電源のオンオフをしたり、といったことに使います。ヒーターの動作には大きな電流が必要なので、ソリッドステート リレー を使っているわけですね。
それで、部品の裏蓋は放熱板の役割もあったのに外れてしまったため、素子が高温になって壊れたようです。そして接点が短絡状態になり、ヒーターが加熱し続けたようです。
交換部品を探したのですが、DC出力用があまり見つからないし、3700円とか結構高い…。中国から取り寄せれば、1000円以下で買えるけど、手元に来るまで1ヶ月くらいかかるし…。
しょうがないので、手元の部品で作ってみることにしました。
ヒーターをオンオフする回路を作る
まず、どのような仕様が求められるのか、確認します。
制御側は、+端子は24V固定で、-端子はヒーターオンの時に 24V から 0V に落ちます。
負荷側は、片方は24V電源の+端子、もう一方はヒーターにつながっています。ヒーター動作時には約10Aの電流が流れます。
FET を使ってスイッチングを行うことにします。10A とかなりの電流が流れるので、定格電流がそれ以上で、なるべく オン抵抗が低いものが良いです。手元にあった「2SJ334」というFETを使いました。作った回路は以下になります。
とても簡単な回路です。制御-端子の電圧が下がると電源からヒーターに電流が流れます。
実際に作った基板が上の画像になります…端子と ヒートシンク しか見えませんが…。かなり電流が流れますので、FET に ヒートシンク をつけました。制御端子の配置が元と逆でした…。
材料費は 300円 くらいだと思います。ほぼ秋月電子で買ってストックしてた物です。( 2SJ334 , ヒートシンク , 放熱シート など)。端子部分は トタン板 をハサミで切って作ってます。
熱設計を確認する
動作テストをしてみると、ちゃんと動作しているようです。…と思ったのですが、ヒートシンクがかなり熱くなっています。そこで熱設計が大丈夫か確認します。ホントは設計段階で確認しなきゃダメだった。「オン抵抗が 数十mΩ だし たいして熱くなんないはず」とか、感覚で判断しちゃダメだった。
FET のデータシートを確認します。温度は150℃以下を保つ必要があります。
動作させて、ドレイン と ソース 間の電位差を測定します。素子の温度で変化し、0.5~0.65V 程度でした。10A 電流が流れているとすると、オン抵抗は 50mΩ~65mΩ になります。40mΩ 程度を想定していたので少し高いです…よくわかりません。
裏蓋を開けた状態で、温度を確認しながら連続稼働させてみます。最大で約95℃でした。150℃を超えなくてよかった。
理論値も考えてみます。ドレイン・ソース間電圧が 0.65V、電流が 10A ならば、消費電力は 6.5W です。ヒートシンクのデータシートを見ると、消費電力 6.5W のとき、温度上昇は 約70℃ です。室温 25℃ であれば、温度は 約95℃ になるので、先程の測定値と一致しました。
3Dプリンターの蓋を閉じると、少し熱がこもり、少し温度が高くなってしまう可能性があります。ただ、ケースファンもついているし、追加で55℃ 以上上がることは無いんじゃないかな。というわけで、熱設計は大丈夫だと思います。
テストプリント
確認のためにテストプリントをしました。
ABS で出力、ヒートベッド温度は 100℃。新しい ホットエンド のテストも兼ねています。データは Thingiverse の「Chinese guardian lions」を縮小したものです。
問題なく テストプリントが完了しました。かなり高精細にプリントできたのではないでしょうか。
おわりに
いろいろトラブルが発生して、しばらく 3Dプリンターが使えなかったけど、やっと使用可能に戻りました。制作作業に励みたい。
更新履歴
2020.05.07 公開
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